『鬼火 Fou follet』(ルイ・マル監督、1963年。@シネマトグラフ)
ジャンヌ・モロー特集の一環だったのにジャンヌ・モローは一瞬しかでてこなかった。アル中から立ち直って、かつて浮名を流したパリ左岸に再び繰り出したアラン(Maurice Ronet)が、旧友の行方を書店で訪ねると、答えは「Ils sont au Flore!!」。それはつまりカフェ・ド・フロールのことだった。そこに行ってみれば知った顔がわんさか。こんなパリのブルジョワの村社会、当時においてさえもはや機能しなくなっていたのではないかと疑う。キャメラを積んだ台車がショーウィンドウに映り込むのは、意図的なものなのかどうか。アモス・ギタイの『ベルリン・イェルサレム』を思い出した。ブルジョワ社会の描き方はシャブロルの方が上手だということを、ルイ・マルはこの作品あたりで露呈させてしまったのだろう。